2006年1月9~11日、美津島町文化会館で
「ツシマヤマネコ保全計画づくり国際ワークショップ」
(以下WS)が、また最終日11日には
市民ワークショップ
「対馬もヤマネコも-ツシマヤマネコと共生する地域社会づくりを目指して-」が開催されました。
主催:ツシマヤマネコPVA実行委員会
共催:環境省 長崎県 対馬市
後援:林野庁 NPO法人どうぶつたちの病院 CBSGJapan
(社)日本獣医師会 日本野生動物医学会 (社)日本動物園水族館協会
協賛:自然保護助成基金 (財)旭硝子財団
<国際WS>
対馬、ひいては世界の宝であるツシマヤマネコの絶滅を回避するための課題を明らかにし、誰が何をする必要があるのか、CBSGから招聘された海外の専門家、国内の専門家、行政、対馬市民の代表、合わせて約120名が、4つのワーキンググループ(以下WG)(①ツシマヤマネコと共生する地域社会づくり②生息域内保全③飼育下繁殖④感染症対策)に分かれて話し合いました。議論の段階ごとに全体会合をもち、グループ間で意見交換を行いました。活発な議論が交わされ、最終日には各WGが行動計画案をまとめることができました。
行動計画案の一部
①ツシマヤマネコと共生する地域社会づくりWG
☆ヤマネコの価値を明確化し共有する
☆ヤマネコについての情報を収集・整理し発信する
☆対馬の産業の活性化にヤマネコを利用する
②生息域内保全WG
☆10年後の野生個体数を現在より10%増やす(10年前の水準にもどす)
☆生息地の分断を防ぐ
☆10年後までにヤマネコの交通事故をなくす
③飼育下繁殖WG
☆飼育下繁殖と分散飼育の必要性や目標を関係者と地域が共有する
☆飼育下繁殖個体は遺伝的多様性を保ちながら100頭まで増やす
④感染症対策WG
☆飼いネコの個体登録条例を制定し対馬からノラネコをなくす
☆適正飼育の普及に努める
☆飼いネコのネコ免疫不全ウイルス感染症への感染率を0%にする
NPO法人どうぶつたちの病院は、WGに参加するとともに、ブース展示を行いました。また、公式シンボルマークのデザインを提供、このマークを使った記念グッズの製作販売を行いました(イラスト:オオノミホ、デザイン:平野泰子)。収益はPVA実行委員会が管理し、全額が今後のツシマヤマネコ保護活動につかわれます。
CBSG:国際自然保護連合(IUCN)種の保全委員会(SSC)の保全繁殖専門家グループ(Convention Breeding Specialist Group)。絶滅のおそれのある種・亜種・個体群の絶滅可能性を評価し、保全計画づくりへの助言を行う。CBSGによるワークショップが日本で開催されるのは初めて。
<市民WS>
対馬とツシマヤマネコを思う小学生の熱い主張で幕を開けた市民WSは、兵庫県立コウノトリの郷公園の池田先生と、(財)日本動物愛護協会の中川先生による基調講演の後国際WSの成果を発表し、市民からの新しい意見を取り入れて「対馬もヤマネコも-共に生きる未来のためのメッセージ-」を採択しました。
「対馬もヤマネコも-共に生きる未来のためのメッセージ-」
私たちのしま「対馬」。大陸と日本を結ぶところに位置する対馬は、山と海に抱かれ、豊かな自然の恵みや、悠久の歴史とともに生きてきた島です。
対馬にはどこか昔なつかしい景色が各地に残り、そこで暮らす人たちも、都会の人が忘れてしまった何かをまだ持っています。ツシマヤマネコは、そのような対馬の自然の中で人々とともに今日まで暮らしてきました。
かつて、ツシマヤマネコは対馬全域に広く分布していました。しかし、最新の調査結果ではその数が約80~110頭と次第に減ってきている事が分かりました。ヤマネコの姿が全く見られなくなってしまった地域もあります。このままでは、いつか対馬からヤマネコが居なくなってしまう日が来るかもしれません。
この3日間、私たちはツシマヤマネコの唯一のふるさとであるここ対馬で、市民、行政、そして、専門家などが集まり、ツシマヤマネコをはじめとする自然と、これからも共に生きていくための知恵を持ち寄り、今、私たちは何をしなければならないかを話し合うためのワークショップを開きました。
ワークショップでは、「ツシマヤマネコと共生する地域社会」すなわち「人が安全快適に暮らし、自然と共に生きる対馬」をみんなで創っていくことが提案されました。
具体的には、孫と暮らせる豊かな対馬であり続けるために、自然を生かした農業・林業・観光業を推進しよう。自然そして命を大切にするために飼っている全ての動物を最後まで責任を持って飼おう。子供達が地域の自然や文化についてもっと身近に学び、体験できるようにしよう。ツシマヤマネコを対馬の豊かな自然の象徴として守り、増やしていこう。対馬の宝、日本の宝、そして世界の宝としてツシマヤマネコを絶やさないように、みんなで知恵を出し合って協力しよう、などの目標のために、さまざまな取り組みを行っていくことが提案されました。
対馬の人もツシマヤマネコも安心して暮らしていくことができる地域をつくることは、私たち市民にとって、本当の豊かな暮らしをつくること。「対馬もヤマネコも」。それが実現した時、対馬に人々の笑顔と誇りが満ちあふれ、動物たちも安心して暮らすことができるでしょう。
このワークショップをスタートとして、ツシマヤマネコをはじめとする対馬の自然と共に生きる、活気あふれる対馬の未来を一緒に創っていきましょう。
平成18年1月11日
ツシマヤマネコ保全計画づくり国際ワークショップ
市民ワークショップ
参加者一同