皆さま
ご無沙汰しております、職員の太田です。
早いもので対馬北部のヤマネコセンターから対馬南部の順化ステーションへと移動し一年が経ちました。ヤマネコセンターで行っていた傷病個体の管理から動物園生まれの健常個体への野生復帰技術の習得という業務内容の変化に順応するのに苦労はしましたがどうにか二年目へと突入することが出来ました。広大な施設の中でヤマネコを管理し10数台の暗視監視カメラでヤマネコの行動を追いながら個体管理を進めております。また、ヤマネコの行動をさらに追うため、ケージ内の環境調査の為に自動撮影カメラと呼ばれる通過型センサーを搭載したカメラで撮影することもあります。
そんな自動撮影カメラにはヤマネコ以外にも多数の生き物が移りこみます。ツシマテンやシベリアイタチといった哺乳類、アカネズミやヒメネズミ、ヒミズといったヤマネコの餌となる小型哺乳類、その他にも多種の鳥類、両生類、爬虫類等々... 改めて対馬の生態系の多様さを感じさせてくれます。特に春先から初夏にかけては渡り鳥が多く、本土ではなかなか見ることの出来ない鳥類を確認できて面白いです。
さてさて、前置きが長くなってしまいましたがタイトルにもある通り順化ステーション周辺では様々な生き物を観察することが出来ますが、昨年は「ミゾゴイ」と言われる鳥の飛来を確認していました。ミゾゴイは主に日本を繁殖地とする渡りをする鳥で春に日本に渡り夏に繁殖し冬には温暖なフィリピン周辺へと戻っていきます。希少な鳥で山間部から里山を利用することから森の忍者とも呼ばれています。正式な個体数は把握されていませんが世界で1000羽以下と言われることもあります。外敵からの攻撃を避けれる営巣地と生物多様性が高い餌場を好むことから、地域環境のシンボルとしている自治体もあります。
そんな地域環境に敏感なミゾゴイですが今年も順化ステーション近くに現れ、渡りの疲れを癒しているのか数日近辺の畑で採餌をしながら過ごしていました。
順化ステーション付近は交通量も殆どなく道もそれなりに太いので道の端に車を停めて出勤前、退勤後に離れた場所から観察を続けていました。そんな時に、なかなかお目に掛かれない出来事が…
採餌をするミゾゴイの目の前をツシマテンが通過していきました。最初はテンがミゾゴイを襲うのではと心配しましたがミゾゴイには目もくれず岩を伝って沢へと消えていきました。テンを目の前にミゾゴイは羽を広げながら全身の羽を膨らませる威嚇姿勢を取りテンに向かって鳴いていました。希少な鳥の貴重な威嚇姿勢は非常に優雅でありながら力強い姿でした。
数日後にミゾゴイは畑周辺から姿を消しましたがテンに負けず営巣地と異性を求めて飛びだったのだと信じています。