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ナナミが与えてくれたもの

 

7月25日(月)、ヤマネコセンターで非公開に飼育されていた「ナナミ」が

息を引き取りました。

 

↑晩年のナナミ。ウズラが大好きで、最後の日まで食べ続ける。 「世界一ウズラ肉を消費したツシマヤマネコ」でした。
↑晩年のナナミ。ウズラが大好きで、最後の日まで食べ続ける。 「世界一ウズラ肉を消費したツシマヤマネコ」でした。

 

ナナミのことは、2021年4月の対馬ニュースのブログ記事でも紹介しました。

 

野生由来のため年齢は不詳。

2015年12月に上対馬町豊で保護されたときから既におばあちゃんでした。

そして、一度は野生復帰に挑戦したものの、1か月後の検査捕獲では衰弱状態であったため、

このままでは野生下での生活は困難と判断されました。

 

 

 

その後体調を回復したナナミは、

当時まだヤマネコを飼育したことがなかった環境省ツシマヤマネコ野生順化ステーションへの「初導入個体」として野生復帰訓練(再判定)を受けることとなり、

環境省のツシマヤマネコ保護増殖事業の推進にも大きく貢献しました。

 

高齢個体のため体調の変化や新たな疾患も次々と出てきましたが、

その度に飼育員や獣医師、野生復帰訓練の内容を検討する専門員らは

新しい知識や経験を積む機会となり、学びと成長につながりました。

 

●馬肉とキャットフードを団子状にしてカロリーアップした餌を考案。食べやすい水分量を見つけようと、日々試行錯誤しました。

 

 

●骨密度低下により骨折が起こって歩行困難に。日々の観察をより丁寧にするようになりました。

 

 

↑クッションが好きで、目が見えなくなってもちゃんと中に納まって寝ていました。
↑クッションが好きで、目が見えなくなってもちゃんと中に納まって寝ていました。

 

ナナミが再び対馬の野山を駆ける日は来ませんでした。

 

20206月からはヤマネコセンターで余生を送りましたが、

できる限りナナミのQOL(生活の質)が維持されるようにお世話をしてきました。

お世話をしながら、「野生動物であったナナミが飼育下で最後を迎える意義」とは何なのか、

ずっと考えていました。

 

 

どうにも人間側の都合の良い視点でしか考えることができませんでしたが、

私はそれが意味あるものだったと、体現できるような飼育員になりたいと思いました。

 

 

 

蔭浦