皆さま
こんばんは、職員の太田です。
表題の通り、悲しいニュースとなりますが4月22日に放獣したMk-109「ひかり」が死亡し収容されました。
経緯としましては以下の通りです。
- 2023年7月18日…対馬市上県町樫滝の国道で負傷しているのを通報により保護し治療とリハビリを開始。
- 2023年10月22日…リハビリ完了後、幼獣保護であり採餌に関しての経験が不足していると考えられ、野生生物保護センターからツシマヤマネコ野生順化ステーションへと移動し野生順化訓練を開始。
- 2024年4月22日…ツシマヤマネコ野生順化ステーションでの訓練メニューを完了し、野生下での生存に支障がない状態に至ったと判断し、保護地点に近い上県町飼所の山中で放獣、当日よりVHF発信機を用いた追跡調査を開始(放獣後5日間は1日6回、放獣6日目以降は1日2回の電場受信確認を行い、位置を確認した。)
- 2024年5月16日…5月14日より放獣後の検査捕獲を開始していたが5月16日に上県町鹿見で箱ワナで錯誤捕獲されたため回収し健康状態を確認後に再放獣した。
- 2024年5月18日…上県町久原の倉庫内で衰弱しているのを住人が発見し通報を受け収容したが、収容時に死亡を確認した。この時、個体の口腔には釣り針が刺さっていた。
収容後に簡易の病理解剖を行い、体重の減少・脱水・口腔に釣り針・胃拡張が確認されました。直接の死因の特定はされませんでした。その後の岡山理科大学での詳細な病理解剖で急性胃拡張から嘔吐を引き起こし窒息死に至ったと推測されています。
放獣から約1ヶ月で死亡したという結果から、今回実施したプロセスに問題がなかったかの見直しや他必要な対策を行うこととなっています。
今回、治療・リハビリ・訓練内容のモニタリングを行った当事者として考えないといけないポイントは複数あると感じています。
- 放獣ポイントが正しかったのか。
- 行動追跡時の回収の判断は出来なかったのか。また、回収の判断をどうするのが良いのか。
- 1点目と被る部分はありますが放獣ポイント周辺から定住地周辺の餌資源量の評価が行われていたか。
- 放獣時期は正しかったのか。
- ステーションでの訓練や訓練内容は意味があったのか。
- 放獣時の設定体重は正しかったのか。
- 行動追跡の定位回数、間隔は適正だったのか。
- 生ゴミやゴミの放置やノラネコへの餌やりを控えるよう、地域への啓発が行われ理解を示して貰えていたのか。
短期の追跡しか出来ていないのでこれ以上は何とも言えませんが、ツシマヤマネコを取り巻く自然環境は改善どころか悪化し続けているのが現状であり、過去の放個体の例と比較しても難易度は上昇しているのではないかと感じています。
変化する環境を考慮しながらもヤマネコが持つ生活様式を変化させないような技術開発を進める必要も重要であると感じました。
改めまして、個体の収容に関わる通報を頂いた皆さまには感謝しかありません。
本当に有難うございました。引き続きヤマネコに関しての情報提供にご協力お願いいたします。
環境省対馬野生生物保護センター(ヤマネコセンター)
電話:0920-84-5577