推定生息数わずか100頭。絶滅の危機に瀕するツシマヤマネコを守るため、それまで獣医師の常駐する動物病院のなかった長崎県対馬市に「対馬動物医療センター」を設立して獣医師を常駐させ、活動拠点としました。ここでは以下の活動に取り組んでいます。
ツシマヤマネコにFIVやFeLVなどイエネコの感染症が確認されています。
感染したイエネコが野外でツシマヤマネコに接触するなどして、ツシマヤマネコに感染症が広がると絶滅の恐れがますます高まります。つまり、対馬のペットをきちんと飼育することが、ツシマヤマネコをはじめ対馬の自然を守るためにとても重要です。
どうぶつたちの病院は、市民の飼育するペットにどうぶつ医療を提供すると共に、対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会(※)の一員として、飼いネコに不妊化手術、ウイルス検査、ワクチン接種、マイクロチップ登録を実施しています。
同協議会では、以下の助成金を受給し、飼い主様にご負担の少ない不妊化手術を実施しました(※²)。
【~2012年度】
環境省・長崎県・九州地区獣医師会連合会ヤマネコ保護協議会などからの資金提供支援のほか、日本経団連自然保護基金および三井物産環境基金(「どうぶつたちの病院」受給)の助成により実施。
【2013年度~】
九州地区獣医師会連合会希少野生動物保護支援協議会からの資金提供支援により実施。
※:対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会 について<構成>環境省、長崎県、対馬市、対馬市教育委員会、獣医師会(福岡県、長崎県、長崎県対馬支部)、NPO法人どうぶつたちの病院、専門家
※²:上記の助成は2018年度で終了しました。金額の詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。
・飼いネコに無料でFIV/FeLVウイルスの検査を実施しています
・2013年から地域のノラネコ対策(不妊化手術、FIV/FeLVウイルス検査、ワクチン接種、マイクロチップ登録、)を実施しています
※³:ワクチンは日本全薬工業株式会社様よりヤマネコ保護支援として提供して頂いています。FIV/FeLV検査キットは日本全薬工業株式会社様より無償提供を受けています。2021年度は247頭分の検査キットを提供して頂きました。
どうぶつたちの病院の活動拠点である対馬動物医療センターでは、交通事故や病気などで保護された野生鳥獣に対する医療提供などを実施しています。また、環境省対馬野生生物保護センターにおけるツシマヤマネコの救護個体の治療や健康管理、野生復帰訓練などを行っています(最近の活動の様子は「対馬ニュース」を参照)。
全国各地の動物園(福岡市動物園、井の頭自然文化園、横浜市立よこはま動物園、富山市ファミリーパーク、九十九島動植物園、京都市動物園、名古屋市東山動物園、沖縄こどもの国、那須どうぶつ王国)では、ツシマヤマネコを分散飼育して繁殖を促し、飼育下個体群の確立を目指しています。
対馬島内にある環境省対馬野生生物保護センターでは、展示個体として飼育下繁殖個体の飼育及び一般公開を行っています。
またツシマヤマネコ野生順化ステーションにおいて、将来的な飼育下個体の野生復帰に備え、野生復帰技術開発を行っています。
※⁴: 環境省のツシマヤマネコ保護増殖事業における種の絶滅を防ぐための保険個体群。
どうぶつたちの病院では、環境省から委託を受け、これらの施設において飼育されているヤマネコたちの飼育管理・定期健康診断・治療などの動物医療の提供を実施しています。また、リハビリや野生復帰訓練等も行っています。
2004年
・対馬ではじめての獣医師の常駐する動物病院を開設。
2005年
・対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会の発足と共に参画。
・協議会による飼いネコへの無料診療(不妊手術、マイクロチップ登録、ワクチン接種など)開始。
2006年
・ツシマヤマネコPHVAワークショップで、FIV重点対策地域(佐護、舟志、志多留・田の浜)が示される。
・ツシマヤマネコの高密度生息地に動物病院を移転。
・重点対策地域のうち、上県町佐護地区でネコの飼育状況調査を対馬野生生物保護センターと協力して実施。
2007年
・上対馬町舟志区で全ての飼いネコの把握とマイクロチップによる個体登録をほぼ達成し外来ネコを監視する体制ができる。
2008年
・FIV/FeLVについて、対馬の中での分布状況を分析。FIVの感染拡大傾向が確認された。
2009年
・佐護地区などの重点対策地域で住民の了解を得てノラネコの不妊化等を開始。
2010年
・対馬市ネコ適正飼養条例制定(2010年7月施行)